2025年12月12日付の日本経済新聞の記事では、与党税制調査会が改正案の大部分をまとめ、来週の税制改正大綱決定に向けて残りの項目を固める、という流れが報じられています。
その中で、投資用不動産を活用した相続税の節税(評価圧縮)に歯止めをかけるため、相続直前に購入した物件の財産評価の方法を改める旨が触れられています。
現時点では正式決定前ですが、報道のトーンから見ても、今回の見直しは「改正の方向性がかなり固まりつつある」=既定路線に近づいていると捉えるのが自然です。
1. 何が変わろうとしているのか(方向性)
今回の見直しの狙いはシンプルです。
- 相続直前に現金を不動産へ換えることで、相続税評価を下げる手法に歯止めをかける
- 結果として、「投資用不動産を買えば必ず評価が下がる」といった単純な図式が通用しにくくなる
2. いま重要なのは「具体案を見て判断」すること
今回の論点は、意図の有無だけで結論が決まる話ではなく、期間要件や対象類型に形式的に当てはまるかが実務上のポイントになり得ます。
例:物件購入“直後”に突然死したら?
純粋な不動産オーナーが新たな物件を購入した直後、予期せぬ突然死が起きた場合――
本人に「相続税対策の意図」がなくても、制度設計次第では「一定期間内の取得」に形式的に該当し、影響を受ける可能性があります。
したがって今後は、次の点を確定情報で確認してから判断することが重要です。
- 対象となる取得の範囲
- 「直前」の定義(何年以内か等)
- 例外・配慮規定の有無
- 適用開始日と経過措置(いつから・どこまで)
3. 今回の改正趣旨は「不動産小口化商品の贈与」も問題視している点に注意
今回の見直しは「相続直前の投資用不動産購入」だけの話ではありません。
以前の投稿でも触れたとおり、不動産小口化商品を“贈与”することで税負担を軽減するスキームも問題視されている流れがあります。
この点を踏まえると、たとえば「改正適用前の駆け込み」と称して
「改正前に購入 → 直後に、改正前の低い評価額で贈与すれば大丈夫」
といったスキームを勧める人が出てきそうですが、改正の趣旨そのものが“贈与スキーム”も含めて問題視している以上、非常に危険だと考えるべきです。
4. 「改正前=安全」とは限らない(総則6項 × AI・データ分析の時代)
さらに注意したいのが、「改正前なら安全」という発想です。
評価の世界には、いわゆる財産評価基本通達の総則6項(通達どおりの評価が著しく不適当な場合に、通達によらない評価が問題となり得る領域)という論点があります。
いわゆる“国税庁の伝家の宝刀”と呼ばれることがあるのは、この規定が形式だけ整えた取引に対して、実態に即した評価を求め得る場面があるためです。
そして近年、国税庁はAI・データ分析を活用して税務調査を効率化している流れがあります。
この状況を踏まえると、改正の適用前であっても、
- “駆け込み”として不自然な時期・態様で行われる
- 取引合理性より「評価差を抜く」意図が前面に出る
- 当局が問題視している類型(小口化商品の購入→短期で贈与 等)に近い
といった案件は、最初からその論点に焦点を当てた確認(照会・調査)が想定されると考えておくのが安全です。
※「必ず否認される」と言い切れる性質の話ではありません。ただ、少なくとも“軽い気持ちでやる類の話ではない”ことは間違いありません。
5. まとめ:結論は「条文・経過措置を見てから」。安易な勧誘に乗らない
今回の見直しは、方向性としては既定路線に近づいています。
だからこそ、いまは次のスタンスが重要です。
- 最終形(条文・適用開始日・経過措置)を確認して判断する
- 「改正前だから安全」という雑な判断は避ける
- “スキームだけ売る人”ではなく、税務の責任を負える専門家に個別相談する
相続は、不動産投資・贈与・相続税評価が絡むと、論点も金額も大きく動きます。検討中の方は、早めに一度整理しておくことをおすすめします。
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