【令和8年度税制改正大綱】投資用不動産評価の改正から考える

相続税評価の「これから」と、見落とされがちな逆の論点

令和8年度税制改正大綱において、投資用不動産の相続税評価について重要な見直しが示されました。改正の詳細はこちら
多くの報道や解説では「実質的な増税」と捉えられがちですが、私は相続税専門税理士として、少し違った視点も持っています。

それは、

この改正は「市場価値の高い不動産」を是正するだけでなく、
「市場価値の低い不動産」を正しく評価する余地を広げる可能性も含んでいる

という点です。

本記事では、制度の概要だけでなく、実務の現場で何が起きてきたのか、そして今回の改正がどのような意味を持つのかを整理します。


1.今回の改正で示された方向性

今回の投資用不動産評価の改正で、国が明確にしたメッセージはシンプルです。

「市場価値の高い土地・不動産は、相続税評価でも高く評価すべき」

これまで、著しく不合理な評価については「総則6項」によって個別否認が行われてきました。
ただし、これはあくまで“最後の手段”であり、実務上は判断のブレや不透明さも残っていました。

今回の改正は、その考え方を制度として明文化し、評価と実勢価格の乖離を是正する方向に舵を切ったと見ることができます。


2.総則6項がなくなったわけではない

誤解されやすい点ですが、今回の改正によって総則6項が廃止されたわけではありません。

  • 極端な評価乖離があれば、引き続き「最後の砦」として適用される余地はある

一方で、「高いものを低く評価する」ことが、これまで以上に難しくなるのは事実でしょう。


3.逆もまた然り ― 見落とされがちなもう一つの論点

ここで、私が今回の改正から感じた逆の視点があります。

市場価値の低い不動産は、相続税評価でも低く評価されるべきではないか

という論点です。

相続税評価のルールブックである財産評価基本通達には、土地評価に関する多くの規定があります。
しかし、その多くは「評価方法」を定めたものであり、

  • 市場価値が低い理由
  • 流動性の低さ
  • 利用制限や個別事情

といった点を十分に反映できる減額項目は、実務上ごく限られています。


4.現場で実際に起きていること

その結果、現場では次のようなケースが少なくありません。

  • 実際には売却が困難な土地
  • 市場では評価されにくい立地・形状の不動産

であっても、通達どおりに評価すると、

「本来より高い相続税」を負担している

という状況が生まれています。

これは、納税者の認識不足というより、制度と実態のズレによる問題だと感じています。


5.これまでの実務の限界

私自身、相続専門税理士として、

  • 通達の枠外も含め
  • 市場価値の低さを踏まえた評価・申告

を行ってきました。

しかし現場では、

  • こちらの主張に対し明確な反論や根拠が示されないまま否認される

という経験も、正直一度や二度ではありません。

「通達に書いていないから認めない」
――その壁に、実務上の限界を感じてきました。


6.今回の改正が持つ、もう一つの意味

今回の改正は、単なる増税策ではありません。

相続税評価を、より「市場価値」に近づける方向へ動かす
という、明確な意思表示でもあります。

であれば今後は、

  • 市場価値が高い場合だけでなく、市場価値が低いことについても合理的な根拠を示せば

正面から評価に反映される余地が広がるはずです。

少なくとも、「理由なく否認される」実務慣行は、是正されるべきだと考えています。


7.相続税申告は「ルールどおり」だけでは足りない

相続税は、一度申告してしまうと何もできない税金と思われがちですが、実際にはそうではありません。

相続税申告は、申告期限から5年以内であれば
土地評価を見直すことで払いすぎてしまった相続税を取り戻す(更正の請求)ことが可能です。

ただし、これは

  • 単純な書類提出
  • 形式的な計算のやり直し

だけで済む話ではありません。

評価の前提整理や合理的根拠を示したうえで、
税務署との計算されたやり取り・主張の組み立てが必要となり、
実務上は相続専門税理士でなければ対応が難しい領域だと感じています。

だからこそ重要なのは、

「通達どおりだから安心」ではなく、
「この評価は、実態に合っているか」

という視点です。

不動産を含む相続では、
評価の前提整理と根拠づくりが、その後の税負担を大きく左右します。


8.最後に ― ご相談について

不動産が関係する相続では、

  • 今回の改正が自分にどう影響するのか
  • この評価で本当にいいのか
  • すでに申告した内容を見直す余地はないのか

といった判断が必要になる場面が少なくありません。

もし、少しでも不安や違和感があれば、一度立ち止まって整理すること自体に意味があります

相続税専門税理士として、制度と実態の両面から、落ち着いて一緒に考えます。

まずはオンラインからご相談いただけますので、お気軽にお問い合わせください。